【易経】「毎日音読」まとめ(その2)周易(下)
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易経
【周易音読】(下巻)澤山咸から火水未済まで(3月20日から4月22日まで)
上巻についてはこちら →乾為天から離為火(2月19日から3月19日)
【易経音読】澤山咸(たくざんかん)彖に曰く,咸は感なり。柔上りて剛下り,二気感応してもって相い与するなり(彖伝)。「咸」は恋愛や結婚に良い卦。二気(陰と陽)は元々合わない。それが相和合し,良き気の交流が生まれる。男(艮)が女(兌)に下っているからこそ,亨り,貞しきに利しとなる。
【易経音読】雷風恒(らいふうこう)天地の道は,恒久にして已まざるなり(彖伝)「恒久」は「ずっとそのまま」ということではなく,変化の道理が恒久不変の道を失わないことを説いている。この肝腎なところを読み落とすと大きな勘違いを起こす。雷地豫の彖伝にも近いものがある。
【易経音読】天山遯(てんざんとん)彖に曰く,遯は亨るとは,遯れて亨るなり(彖伝)「遯」は「のがれる」。下から二つの陰が伸びてきて,陽が退避,引退という象。天の流れに従って,世を遯れることで,やがて亨と教える。引退のタイミングを見誤らず,正しい方法で退くことが肝要。
【易経音読】雷天大壮(らいてんたいそう)大壮は,貞しきに利ろし。彖に曰く,大壮は,大なる者壮(さか)んなるなり(彖伝)昨日の天山遯と逆で,こちらは陽の勢いが盛んな象。それ故に,勢いに任せすぎず,貞正にするなら良い,という。いけいけどんどんはダメですよ,ということ。
【易経音読】火地晋(かちしん)象に曰く,明地上に出づるは晋なり。君子もってみずから明徳を昭らかにす(象伝)火が地の上にある象で,明(太陽)が地上に出れば辺りは明るくなるように,君子も自らの明徳をあきらかにして,太陽のごとく人心に仰ぎ見られる存在たれ,と説く。
【易経音読】地火明夷(ちかめいい)艱しみて貞なるに利ろしとは,その明を晦ますなり(彖伝)明(離・文明)が地(坤・大地)の下に隠れるのが地火明夷。暗愚の君主のもとで賢者の知恵が活かされない卦。周の文王は殷の紂王に囚われたが,明徳を韜晦し,耐え忍び,やがて殷を滅ぼした。
【易経音読】風火家人(ふうかかじん)家を正しくして天下定まる(彖伝)九五の陽(男)が外卦の,六二の陰(女)が内卦のそれぞれの中正を得て,男女それぞれが正しい位置にいる。男女それぞれがしっかりと位置を定め,役目を果たすことで家がととのい,それが天下の平和の基盤だという。
【易経音読】火澤睽(かたくけい)天地は睽けどもその事同じきなり。男女は睽けどもその志通ずるなり(彖伝)「睽」は「そむく」意味で「相反する」ということ。睽の卦は,一見人付き合いが上手くいかない象に見えるが,相反するが故に求め合い,交わり,通じると言う。
【易経音読】水山蹇(すいざんけん)象に曰く,山上に水あるは蹇なり。君子もって身に反りて徳を修む(象伝)「蹇」の卦は,坎(水)が艮(山)の上にあって非常な困難を表す。そういう時には,自身を省み道徳を修めることが肝要と説く。困難に際して他の責任に転嫁しない姿勢を取れと。
【易経音読】雷水解(らいすいかい)物もって難に終わるべからず。故にこれを受くるに解をもってす(序卦伝)昨日の「水山蹇」の卦が困難,災難。続く「解」は,天地が解けて,雷雨が起こり,百果草木が芽吹く。困難で終わる事はない。その動きをしっかりつかめということ。
【易経音読】山澤損(さんたくそん)六三。三人行けば一人を損す。一人行けばその友を得(爻辞)易らしい辞。易は「陰と陽」なので三人は一人余ることになる(互いに猜疑心を生じてしまい迷う,と岩波文庫)。一人だったら友が得られるという。深く感じるものがある辞。
【易経音読】風雷益(ふうらいえき)彖に曰く,益は,上を損して下を益す(彖伝)昨日の「山澤損」の逆で,こちらは上(国家・組織)が損をして,民に喜びを与える。民は喜び励むので,結果として国は富み,益となる。山澤損と風雷益が一対となって経済の基本を説いている。
【易経音読】澤天夬(たくてんかい)往くところあるに利ろしとは,剛長ずればすなわち終わればなり(彖伝)夬は「決壊・決去」の時期を表し,旧暦3月,新暦4月に当たる。陽が長じて陰を駆逐しようとしていて,まさに新しい時代の幕開けを意味する。今日の日に相応しい。
【易経音読】天風姤(てんぷうこう)姤は女壮んなり。女を取(めと)るに用うるなかれ(卦辞)陽が盛んなところに陰が入り込んできた卦。女性1人で5人の男性を相手にするのは不貞の女。こんな女を娶ってはいけない,と言う。これは女が悪いというより惑わされる男性への訓戒というべきか。
【易経音読】澤地萃(たくちすい)彖に曰く,萃は,聚なり。順にしてもって説び,剛中にして応ず,故に聚まるなり(彖伝)地(坤)は順う,澤(兌)は説びを表す。九五が中を得て六二と応じている。だから人が喜んで集まり,物も豊かになる。ただし,人や物が集まれば不慮の事態も。要警戒。
【易経音読】地風升(ちふうしょう)象に曰く,地中に木を生ずるは升なり(象伝)地(坤)の中に木(巽)が生じるのが升。木が地中の養分をしっかり吸収して伸びよう,成長しようとしていくのと同様,君子も道徳を修養し,少しずつ善を重ねて成長すべし,という。
【易経音読】澤水困(たくすいこん)彖に曰く,困は,剛揜(おお)わるるなり。険にしてもって説ぶ(彖伝)「困」は陽が陰に囲まれた卦だが,険(坎・水)にあっても,説(兌・澤)ぶことを忘れずに,誠実を貫くのが君子だという。 象は,沢に水がない状態。これは苦しい。
【易経音読】水風井(すいふうせい)井は,邑を改めて井を改めず。喪うなく得るなし。往来井を井とす(卦辞)井戸は古来,人の住むところの中心をなした。いくら汲んでも枯れず,村がなくなっても井戸はなくならない。街の中心にあって人を潤した井戸のように,君子もかくあるべしと教える。
【易経音読】澤火革(たくかかく)上六,君子豹変す。小人は面を革む(爻辞)「革」は革命。上六は革命が成就する段階で,秋になって豹の紋様が鮮やかに変わるように,君子の偉業はかくも美しい。小人は面持ちを改めて君子に付き従いなさい…という。「君子豹変」は本来良い意味。
【易経音読】火風鼎(かふうてい)巽にして耳目聡明なり(彖伝)内卦が巽(風)で,外卦が離(火)。内には巽順の徳があり,外は耳目聡明と言う。君子が謙虚,従順に賢人達の意見に耳を傾ければ,天下は定まる。鼎は,祭事に使う大事な器。この卦は鼎の形を表している。
【易経音読】震為雷(しんいらい)君子もって恐懼修省す(象伝)「震(雷)」が重なった卦が震為雷。人は雷鳴が来ると恐れ戦くが,過ぎ去ると呵呵と大笑いして忘れ去る。しかし,君子たるものは,身を慎み,我が身を省み,次に備えるべきだという。
【易経音読】艮為山(ごんいさん)象に曰く,兼ねて山あるは艮なり。君子もって思うことその位を出でず(象伝)昨日の震為雷の逆で,動かない,止まる卦の「艮」。「阻害」「邪魔」があって動けないのではなく,分相応であること,自分の力量に応じた位置に止まることの意義を説く。
【易経音読】風山漸(ふうさんぜん)止まりて巽い,動きて窮まらざるなり(彖伝)「漸」は,山(艮・止まる)の上に木(風・動く)の象。どっしりと構えたところから,時間をかけてゆっくりと成長していくことの大切さを説く。
【易経音読】雷澤帰妹(らいたくきまい)彖に曰く,帰妹は,天地の大義なり。天地交わらざれば万物興らず。帰妹は,人の終始なり(彖伝)帰妹は,女が男に嫁ぐことを表す卦。陰陽が交わらなければ何も生まれない…が,その順序をを誤ってはならないと言う。
【易経音読】雷火豊(らいかほう)日中すればすなわちかたむき,月みちればすなわち食く(彖伝)太陽は南中すれば西に傾き,月は満ちれば必ず欠ける。満ち欠けは必然の時の流れである。ましてや人の栄枯盛衰も時の盛衰とともにある。心せよと説く。
【易経音読】火山旅(かざんりょ)旅は,小しく亨る。旅には貞しければ吉なり(卦辞)「旅」は今でこそ「楽しみ」ともなるが,本来,未知の土地に身を置き,道中も不安。大変なことだったので「小しく亨」となる。また,旅の恥はかきすてはもってのほか。身を正しくして過ごせと説く。
【易経音読】巽為風(そんいふう)巽は小しく亨る。往くところあるに利ろし。大人を見るに利ろし(卦辞)巽は「したがう」ことの大切さを説く。従う相手は大人がよろしい。またリーダーたるものも,よくよく考えてから指示を出すことという。
【易経音読】兌為澤(だいたく)説びてもって民に先立つときは,民その労を忘れ,説びてもって難を犯すときは,民その死を忘る(彖伝)上に立つ者が自ら悦んで大変な仕事に励めば,民はその苦労を忘れるし,率先して艱難に当たれば,民は我が命も顧みない。本来的な悦びで上下一体となっている
【易経音読】風水渙(ふうすいかん)象に曰く,風の水上を行くは渙なり。先王もって帝を亨(まつ)り廟を立つ(象伝)「渙」は「散る」イメージ。分散,離散など人心が離れるイメージにつながる。そこでリーダーは祭祀を行い,人々の淀んだ気持ちを「散し」,人心を集めるのである。
【易経音読】水澤節(すいたくせつ)節は亨る。苦節は貞しくすべからず(卦辞)「苦節は貞にすべからず」という読み方もある。お金にしても食べることにしても,節度は重要だが,一方で,あまりに厳しく節制しすぎると身体を壊すことになる。厳しすぎないように…という。
【易経音読】風澤中孚(ふうたくちゅうふ)彖に曰く,中孚は,柔,内に在りて剛,中を得たり(彖伝)「孚」は易では「まこと」と読ませることが多い。陰が内にあって陽が外にある。下の者が説び(兌・澤),上の者が謙遜(巽・風)する。こういう孚誠が国を感化することができるという。
【易経音読】雷山小過(らいざんしょうか)小過は,亨る。貞しきに利ろし。小事には可なり。大事には可ならず(卦辞)小過は,自分の分限を少し超えるまではいいが,大きく超えるのは不可という。小さい鳥が大きく羽ばたこうとしても無理。自分の身のほどをわきまえることの重要性を説く。
【易経音読】水火既済(すいかきせい)君子もって患を思いて予めこれを防ぐ(象伝)既済の卦は,六爻の陰陽が正位にあって,完璧・完成を表す。事業が成った後は,後は衰える,欠けるしかない。憂い,患いごとに備えて思いを巡らしておくことが必要である。
【易経音読】火水未済(かすいびせい)六三。いまだ済らず。征くは凶なり。大川を渉るに利ろし(爻辞)「未済」は未完成段階を表す卦。この段階で大きなことを起こすのは時期尚早。しかし適切な努力を積み重ねることで,大きな事業に踏み切っても良いという。
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