只管音読 國弘流英語の話し方
同時通訳の神様 國弘正雄氏の訃報に接して
同時通訳の神様と言われた國弘正雄氏がお亡くなりになりました。
47ニュース
元参院議員,国弘正雄氏が死去 同時通訳の第一人者
※ニュースへのリンクのため,時間が経てばリンク切れがあるかもしれません。
その際にはご容赦ください。
(要旨)
同時通訳の第一人者の国弘正雄氏が2014年11月25日に亡くなられた。
1969年にアポロ第11号の月面着陸の際の同時通訳をされるなど同時通訳の草分け的存在であり,1989年の参院選で旧社会党から立候補。参院議員を1期務めた。
國弘先生の同時通訳者としての功績は絶大で,まさに「草分け的存在」であったことは間違いありません。
私にとっては,英語学習の大きな指針を与えてくれた方でした。
只管音読 ただひたすら音読せよ
2003年頃のことですが,ふと「昔は英語が好きで勉強していたのに,話せないまま,好きなものが英語で読めないままってもったいないよなあ」と思って英語の勉強を再開しました。
その際,いろいろ本屋で英語学習に関する本を手に取った中で「これだ」と思った一冊が,國弘先生の「國弘流英語の話しかた」でした。
つまるところ,ただひたすら音読せよ,という内容になるのですが,これには今となっては賛否両論あるでしょう。
私自身,日本語教育に携わり,語学教授法の歴史を一通り見ていますので,「ひたすら音読せよ」の弊害につては,まあ一般の英語学習者よりは理論面でも熟知しています。
その上で,でも,やっぱり言いたい。
音読を繰り返さずにペラペラになることはない。
ただ繰り返せば良いってものじゃない。そこは國弘先生もきちんと述べられています。
この本の中で出てくるエピソードで今も頭に残っているのが,長嶋監督と松井選手の話。
まだ日本でプレイしていた頃の松井選手のことですが,黙々と素振りを繰り返す。
ひたすら素振りをする。
素晴らしい才能を持っているのに,さらにその上に凡人以上の素振りをする。
だから素晴らしい結果を出す。
だから音読せよ,ということだけではありません。
長嶋監督は,その素振りの音を聞けば,今,松井選手が「外角高めのボールを打つための素振りをしているのか,内角を攻められたときにうまく打ち返すための素振りをしているのかわかる」というエピソード。
本当かどうかわかりません。
大事なのは,ただ素振りをするのではなく,黙々と同じことを繰り返しているように見えながら,ちゃんと「自分なりの課題」を設定して,その克服のために基礎を繰り返している
ここです。
ただ音読せよ・・・では,時代を超えた名著として,英語学習者には受け入れられなかったでしょう。
「この音読ではこの発音をうまくするためにやろう」
「この音読で,この文法の項目を使いこなせるようになってやろう」
「この音読で,このフレーズをあの場面で使いこなせるようになろう」
そういう自分なりの目標だったり課題だったりを設定し,トレーニングする。
それが大事なのです。
そういうことを学んだ本が,國弘先生の「國弘流英語の話しかた」でした。
実際,その本を読んでから4ヶ月ぐらいですが,毎日2時間ぐらいひたすら音読トレーニングを繰り返しました。
徹底的に基礎文法を叩き込むためです。
リピーティング,オーバーラッピング,シャドーイング。
シャドーイングというトレーニング法を取り入れたのは,当時の一般学習者としては早い方だったでしょう。
※当時のNHKラジオ英会話の岩村圭南先生のおかげですが。
かつて,中学1年生の時の,教科書準拠のカセットテープは繰り返し繰り返し聞いて音読していて,年度末には切れました。文字通り擦り切れたのです。
そこまでやったおかげで,手前味噌ですが,初対面のネイティブ英語話者と英語で話した後,「で,君はどのくらい留学していたんだい?」としばしば聞かれるレベルの発音で話せるようにはなりました。
只管音読という方法。無意味に繰り返すことの無意味さは,すでに語学教育の現場では「弊害」といわれて久しいのですが,それでも捨てきれない何かを今も感じるのは,國弘先生のこの本があるからです。
一度は読んでほしい本です。
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