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【毎日易経まとめ】澤山咸から火水未済(『易経』下巻)

公開日: : 易経

『易経』下巻 澤山咸から火水未済まで

【毎日易経】彖に曰く,咸は感なり。柔上りて剛下り,二気感応してもって相い与するなり(澤山咸)下巻のトップは「咸卦」で,咸は感の古い字体。陰が6爻で「上り」,陽が3爻で「下る」。これで「陰陽」が相交わる。男女の気が交わり,感応するところから全てが生まれる。だからこの卦は亨る。

【毎日易経】九五。その脢(せじし)に咸ず。悔いなし(澤山咸)「咸」の卦は下から順に人体の部分になぞらえて解説している。五爻は脢。背中の肉は自分の思うように動かせないところ。むやみに動かないし,周りの刺激にいちいち反応しない。そういう態度であれば悔いは無いという。

【毎日易経】象に曰く,雷風は恒なり。君子もって立ちて方を易えず(雷風恒)雷(震・動き)と風(巽・従う)が組合わさる。天地の動き,季節の移り変わりなど変化は起こるがその常理は「恒」(変わらない)である。君子もどんな困難に見舞われようと,独立し,その常とする方正の道を変えない。

【毎日易経】上六。恒を振う。凶なり(雷風恒)上六は,陰柔居極,「恒」の行き着くところで,かえって恒常不変を保つことができない。フラフラしている。陽極まれば陰,陰極まれば陽。恒も極まれば恒でなくなる。これでは恒の徳を保てない。よって凶である(成功しない)という。

【毎日易経】彖に曰く,遯は亨るとは,遯れて亨るなり(天山遯)十二消長卦では旧暦6月に当たる。下から二陰(小人)が長じて来て,陽(君子)が押されつつある。まだ九五と六二に正応があるうちに正しく行動を起こすことが可能である。逃れる時期を見誤らないことも君子として肝要である。

【毎日易経】初六。遯尾なり。厲(あやう)し。往くところあるに用うるなかれ(天山遯)「遯」は「のがれる」ことを表すが,初六はその最後尾。いわば殿(しんがり)。逃げ後れて危険にある可能性も高いので,進んでことを行う時期ではない。身を潜めて才能を隠し,時期の到来を待つべし。

【毎日易経】彖に曰く,大壯は大なる者壯(さか)んなるなり(雷天大壮)大壯は陽が長じて,勢いが盛んになっている様を表している。勢いが良すぎて,調子にのりがちな時期である。だからこそ,堅固に貞節を守るという徳が求められる。傲り高ぶるのは滅びへの道である。今こそ戒めの時期。

【毎日易経】小人は壮を用い、君子は罔を用う。貞なれども厲し(雷天大壮)九三は、下卦「乾」の極みで、すなわち陽の極み。過剛不中で、壮に過ぎる状況である。つまり壮んな上にも壮んな状態で度を過ごしやすい。貞正であっても危険な状況である。「壮」は「過度」「行き過ぎ」を戒める。

【毎日易経】象に曰く,明地上に出づるは晉なり。君子もって自ら明徳を昭らかにす(火地晉)「明(離)」が「地(坤)」の上にあるのが晉の卦。 明(太陽)が地上に出れば辺りは隈無く照らされる。君子もその卦象にならって,自らの明徳を明らかにするように務めなければならない,という。

【毎日易経】晉如たる鼫鼠,貞しけれ厲し(火地晉)「晉」は「進む」を表す卦。立身出世はいいが,不当に君位に近いほどの高位を得てしまったような場合は,あたかも大きなネズミのように,ついつい権力を貪り,横暴な振る舞いに及んでしまう。身の程をわきまえることもできなくなるという。

【毎日易経】内文明にして外柔順,もって大難を蒙る。文王これをもってせり(地火明夷)地(坤)の中に火(離)が入るのが明夷。内は文明で外は柔順。これは暗愚の君主に明察な賢者が捕えられ,傷つく象。殷の紂王に周の文王が幽閉されたのがそれである。ここは艱難に耐え忍び時期を待つべし。

【毎日易経】六五。箕子の明夷る。貞しきに利ろし(地火明夷)暗愚の君主によって明徳を傷つけられるような立場にある六五であるが,柔順居中,その徳を守って貞正を失わない。殷の紂王を諌め,艱難の苦しみに遭うも,貞正を貫いた箕子の振る舞いに見習うべき,と言う。

【毎日易経】家を正しくして天下定まる(風火家人)六二の陰,九五の陽が正位にあって呼応していることから家が治まる卦とされる家人。『大学』でも「その国を治めんと欲する者は先ずその家を斉う」とある。家が国家の基本であり,家が治まるのは各人が役割をきちんと果たすことから始まる。

【毎日易経】象に曰く,王有家に仮るとは,交々相愛するなり(風火家人)九五は,陽剛中正で,六二と正応する。王がよく家を治め,夫婦が互いに愛し合っている様子を示す。家族愛に満ちた象で,これはひいては天下国家を治める基本となる。何も憂うるところはない。

【毎日易経】睽は,火動きて上り,沢動きて下る。二女同居して,その志は行いを同じくせず(火澤睽)睽は離(火)と兌(澤)の向かう方向が完全にすれちがいで,しかも二女(離・兌)が同居して志向が同じでない。しかし,六五と九二が正応するので,大事は無理だが小事は吉。

【毎日易経】悪人を見るも咎なし(火澤睽)火澤睽の「睽」は「そむく」,つまり人と反目しあう時を表す。初九なので,その「反目」の始まりの時。まだ深刻ではない。人と会う時に過大な期待をせずに「本来は会うべきではない悪人」ぐらいのつもりで,心を広くして会えば咎はないという。

【毎日易経】彖に曰く,蹇は,難なり。険前に在るなり(水山蹇)水山蹇は四大難卦の一つ。危険(水・坎)を前にして止まる(山・艮)様子を表す。危険,艱難が目の前にあって一歩も進めない状況である。危機を前にして,我が身を省み,徳を修めることに努める。これが君子のとるべき道という。

【毎日易経】九五。大いに蹇むも,朋来る(水山蹇)水山蹇は非常な困難を表す難卦の一つであるが,卦辞はひとつひとつ対応の仕方を教えてくれる。九五は険難のまっただ中であるが,六二(正応)の友が助けに来てくれるという。中正の徳を守っていれば助けがある。困難な時こそ忘れずに。

【毎日易経】天地解けて雷雨作(おこ)り,雷雨作って百果草木みな甲坼(こうたく)す(雷水解)「解」は困難(水・坎)の局面から,動いて(雷・離)逃れる様を示す。陰陽の気が交わり,雷雨が起こることによって天地に草木が芽吹く(甲坼=種子が殻を破り芽吹くこと)。解決のときである。

【毎日易経】田(かり)して三狐を獲,黄矢を得たり。貞しければ利ろし(雷水解)「田」は狩りをする場所。三狐は初・三・上の陰爻を指している。狩りに出て3人の小人を捕えたところ,黄矢を得た。黄は中,矢は直の象徴。貞正をもっていればよろしいという。雷水解は困難が解決に向かう卦。

【毎日易経】二簋(き)もって享(まつ)るべし(山澤損)「損」は収入が少なく,支出が多い時の過ごし方を教えてくれる卦。出費を控えるに当たり,孚(まこと)があれば良いという。神様へのお供えも華美にできなければ,たった2枚の竹皿に供物を盛るだけでも,誠意があれば良いという。

【毎日易経】三人行けば一人を損す。一人行けばその友を得(山澤損)内卦は乾(三爻全て陽)から第三爻が陰に変わった形。つまり三人で行動して一人損したという形である。しかし第三爻は上九に正応している。一人で行けば友を得られる。一人なら友ができ,三人で行けば猜疑心が生まれと説く。

【毎日易経】益は,上を損して下を益す。民説(よろこ)ぶこと疆(かぎ)りなし(風雷益)山澤損と対をなす卦。上卦は全陽のところを一つ陰となり,下卦が一つ陽になる。上が損して下を益することだから民はもちろん説ぶ。国家が利益を国民に還元してこそ国も栄えるというものである。

【毎日易経】あるいはこれを益す。十朋の亀も違(たご)う克(あた)わず(風雷益)六二は柔順中正で九五の剛中と正応する。明君が優秀な臣下を信頼する象。十朋とは非常に高価なこと。そんな高価な亀で占っても間違いないほど,優れた家臣に活躍させれば国家に利益があるということ。

【毎日易経】夬は,王庭に揚ぐ。孚あって号び,厲きことあり(澤天夬)「夬」は「決断」を表す。上六の小人を排除するのだが,公の場にて公明正大に理由を発表し,誠心誠意を持って対応する。それでも危ういことはあるので慎重に事を運ぶべきである。続きでは「まず足下から固めよ」とも言う。

【毎日易経】号(さけ)ぶことなかれ。終に凶あり(澤天夬)「澤天夬」は小人を追い払う時を説く卦だが,この上六は排除される側の立場。これまでの悪行を責められ,君子(九五)に,ついに追われる運命のもの。どのように泣きわめき叫んでも無駄。受け入れて去るしか無いのである。

【毎日易経】姤は,女壮んなり。女を娶るに用うるなかれ(天風姤)「姤」は陽(男性)が盛んなところに一陰(女性)が入り込んだ様子。一人で五人の男を相手にするような女は娶るに如かずという。またこの一人の女性に男性陣が翻弄されてしまうこともある。男のだらしなさでもある。要注意

【毎日易経】包に魚あり。咎なし。賓に利ろしからず(天風姤)「姤」の卦は初六の一陰が他の五陽を支配しようとする象。その勢いを九二がしっかり押さえ込んでいれば咎はない。もし止められず,上の陽に会わせてしまうようではよろしくない。危機の回避は,最初の段階で止めるに尽きる。

【毎日易経】萃は,聚なり。順にしてもって説び,剛中にして応ず,故に聚まるなり(澤地萃)「萃」は地上に澤があり潤う象。「澤」は説び,「地」は順う。九五の君主に下卦の三陰が従っており,物も豊かで,民心も従っている。だからこそ油断大敵。貞正は守ってこそ繁栄は維持される。

【毎日易経】孚あるも終わらず。すなわち乱れすなわち萃まる。若し号べば一握して笑いを為さん(澤地萃)初六は九四と正応を為しているが,近くにいる六二,六三に阻まれ,取り乱したりあるいはついついてつるんでしまったりする。助けを求めれば九四が来てくれるので安心せよ。

【毎日易経】君子もって徳に順い,小を積みてもって高大なり(地風升)「升」は「昇」,上昇を表す卦。地中(地)に木(風)が生じて成長する様を卦象に見る。君子も道徳に従って修身し,小さなことをコツコツ積み重ねてやがて高大に至るように心がけよ。上昇するには,徳と地道な努力が必要。

【毎日易経】上六,冥(くら)くして升(のぼ)る。息まざるの貞に利ろし(地風升)「升」は「昇る」様子を表し,どの爻も基本的には吉である。しかし,やはり上六は要注意。やみくもに上に登ることだけを考えてはいけない。不断に貞正を保つことを心がけなければならないという。

【毎日易経】困は,剛揜わるるなり。険にしてもって説ぶ(澤水困)「困」は,易経四大難卦の一つ。陽(剛)が陰に覆われて(はさまれて)苦しんでいる様をあらわす。にっちもさっちもいかない状態。しかし険難(坎)にあっても説び(兌)を忘れない。それは君子だからこそできる,と続く。

【毎日易経】劓(はなき)られ刖(あしき)られ,赤紱(せきふつ)に困しむ。すなわち徐ろに説びあり(澤水困)九五は陽剛中正の君主であるが,上六に押さえられ,下からも六三の陰に迫られている。困の極みであるが,やがては九二の助けを得ておもむろに喜べる時が来る。「辛抱」を説く。

【毎日易経】井(せい)は,邑を改めて井を改めず(水風井)「井(せい)」は「井戸」。木(風)を水に入れて水をくみ上げる様子から。邑(村)は時とともに変わろうとも,生活の中心となる井戸はいつまでも変わらない。井戸が人々の中心にあり,人々を集める存在であることを示している。

【毎日易経】井渫(さら)えたれども食らわれず。我が心の惻(いた)みをなす(水風井)「井」の爻辞は順に井戸の「成長」を示す。九三に至り漸く水も清く澄んだが,まだ人に飲んでもらえていない。才徳は備わっているのに登用されない人材のようで,心痛むが王者の見いだしてくれるのを待つ。

【毎日易経】革は,已日にしてすなわち孚とせらる(澤火革)「革」は革命,革新,改革の「革」。革新・革命は已日,つまり「すでにそうなるべき時」に至ってから起これば,人心は「孚」として追随する。気に逸ると事は成らない。旧体制を倒すのも「時期」の見極めが重要。

【毎日易経】大人虎変す。いまだ占わずして孚あり(澤火革)九五は陽剛中正。革命を成し遂げるという天下の大事業を完成させる立派な功績を残す名君の象。それはあたかも虎が夏から秋にかけて毛を抜け変えらせ,美しい紋様になるように,もはや占うまでもなく孚と称されるだろう。

【毎日易経】巽にして耳目聡明なり(火風鼎)「鼎」の卦は,内卦が巽,外卦が離。内に巽順(風のように逆らわず,柔順な様子),外は耳目聡明(離は文化・文明)。素直に賢人の言葉に耳を傾けるような姿勢であれば,その君子の世は間違いない。鼎の軽重が問われるようなことはない。

【毎日易経】初六。鼎趾を顚(さか)しまにす。否を出だすに利ろし(火風鼎)初六は陰柔居下で,鼎の足に当たる。初六は最下位にいて九四に応じることから,逆さまを向いている象である。しかし鼎を逆さまにすることは悪いもの(否)を出すことにあたるので良いことである。道理にかなうという。

【毎日易経】震は,亨る。震の来るとき虩虩(げきげき)たり。笑言啞啞(あくあく)たり(震為雷)震は雷鳴・震動を意味する。「動く」ので亨る。雷鳴が鳴れば恐れおののくが,終われば安心して笑い飛ばす。天災に遭っても,恐れ慎み,後に規範に適った行動を起こすのであれば福を招くという。

【毎日易経】九四。震いて遂に泥(なず)む(震為雷)九四は陽剛不中正で、三爻・五爻の隠に挟まれた状態。恐れおののき震えて愚図愚図している上に、泥にはまったように身動きが取れなくなっている。全く正しい身の処し方ができない状態。これは徳がついてきていない状態

【毎日易経】艮は止なり。時止まるべければすなわち止まり、時行くべければすなわち行き、動静その時を失わず、その道光明なり(艮為山)易経は、常にどう行動すべきかを示してくれるが、艮は「止まる」時があることを示している。止まることも行動の一つ。時にあう進退の動きが肝要である。

【毎日易経】その腓に艮(とど)まる。拯(すく)わずしてそれ随う。その心快からず(艮為山)艮の卦辞は足先から順に上に上る。六二は腓(こむら)。腓に止まろうと思っても,すぐ上の太ももと一緒に動くもの。過剛不中正の九三の不正を正せず,ついていくしかなく,内心面白くない。

【毎日易経】漸は,女の帰(とつ)ぐに吉なり。貞しきに利ろし(風山漸)漸は,下卦が山(艮)で止まる,上卦が風(巽)で従う。止まって,従う卦徳すなわち正しい手順で少しずつ前に進むというのは,女性が嫁ぐのに良い姿であるという。貞正をとりまもりなさい,と教えている。

【毎日易経】鴻(かり)干(みぎわ)に進む。小子は厲し。言あれども咎なし(風山漸)「漸」の卦は全て鴻が徐々に進む姿に象る。初六は陰柔不正無応で,進むべき時の初めに全く力のない弱い状態。なかなか進む勇気が出てこないところだが,慎重にかまえて進めば,批判はあっても咎はない。

【毎日易経】彖に曰く,帰妹は,天地の大義なり。天地交わらざれば万物興らず。帰妹は,人の終始なり(雷澤帰妹)「帰妹」は,兌(少女)が,震(長男)に嫁ぐ象。これは天地の大義であり,陰陽が交わらなければ何も生まれない。帰妹こそ人の道の終始を示すものである。ただしその手順は重要。

【毎日易経】帰妹に期(とき)を愆(あやま)る。帰(とつ)ぐを遅(ま)つことあり(雷澤帰妹)九四は,陽剛で正応がない(相手は初九)。賢女が良い相手に恵まれず婚期を逃している象。嫁ぐにふさわしい相手を待つしかない。帰妹の卦は女性の結婚における行動のありようを示している。

【毎日易経】日中すればすなわち昃(かたむ)き,月盈つればすなわち食(か)く。天地の盈虚は,時と消息す(雷火豊)「豊」は,明(離)にして動く(雷)ので,大きく豊かという卦徳が生まれるが,しかし,日もやがて西に沈むように,盛衰は必須のこと。そのことをゆめゆめ忘れるなと戒める。

【毎日易経】その蔀を豊(おお)いにす。日中に斗を見る(雷火豊)六二と九四で同じ卦辞が並ぶ。六二も九四も六五の暗君に覆われ,その力を発揮できない状態。日よけの蔀が大きくて,屋内に日が射さず,日中にも関わらず北斗星が見えるほどの暗い状態。その解決は六二,九五で異なる。

【毎日易経】旅は,少しく亨る。旅には貞しければ吉なり(火山旅)山(艮)の上に火(離)があるところから,山上の火が次々に燃え移り一カ所に止まらないことから「旅」に象る。旅は今とは異なり想像を絶する苦しみ,辛さがあるが,貞正を保つならば,吉であるという。

【毎日易経】旅して瑣瑣たり。斯れその災いを取るところなり(火山旅)初六は,陰柔居下,せっかく旅に出たものの,心がせせこましい,せかせかした状態。落ち着かないようでは,却って災いを招くようなことになる。「旅」は旅の不便さ,大変さを説く。貞正を保てば良しとあるように心がけ次第。

【毎日易経】象に曰く,随風は巽なり。君子もって命を申ね事を行う(巽為風)「巽」が重なった卦。巽は巽順,人に従うの意。まずは人に従うところから進めば事に当たるによろしいという。ただし,従う相手は立派な相手であるべきことは言うまでもない。君子は丁寧に命令を重ねて事を進める。

【毎日易経】九三。頻りに巽(したが)う。吝なり(巽為風)巽為風は,「従う」姿勢について説く卦。従っていれば良いというものではないという。剛(陽)でありながら不中。うわべだけ従ったように見せかけて,本心は異なる。本当の巽順でない姿勢では,志は窮する。だから吝であるという。

【毎日易経】彖に曰く,兌は説なり。剛中にして柔外なり。説びてもって貞なるに利ろし(兌為澤)「兌」は「澤」が二つ連なった卦で,説(よろこ)びを表す。二,五の陽爻が中し,陰爻が三,六爻に位置している。説びの卦であるが,堕落した説びではなく,やはり貞正を保ってこそである。

【毎日易経】剥に孚あり。厲きことあり(兌為澤)九五は陽剛中正の身で,位がまさに君主の位置にある。しかしながら上六の陰爻が惑わしにきている事を警戒しなければならない。君主を剥ぎ取ろうとする上六を孚と信じる気持ちで親しんでしまうが,危険である。

【毎日易経】風の水上を行くは渙なり。先王もって帝を亨り廟を立つ(風水渙)「渙」は散らすの意味。風が水上をわたると水を吹き散らすところを卦象に採っている。人心が散らないように,王は廟を立て,祭祀を行い,天下の人の心の離散を防ぐべし,という。

【毎日易経】渙のときその大号を汗にす。(風水渙)九五は陽剛中正,天下を治めるべき君主として,人心が渙散しないよう(散らないよう)大号令を発する立場。汗が一度出たら戻らないように,命令も一度出したら引っ込めることはならない。それだけの強い意志,覚悟をもって発するべきである。

【毎日易経】節は,亨る。苦節は貞しくすべからず(水澤節)沢の上に水があるが,その容量に限度がある状態を卦象にとっている。節度は「程よくして止まる」。節制,節食,節約など何ごとも行き過ぎることは良くないが,「節度」ある節制であるべきという。「程よい」を常に考えるべし。

【毎日易経】戸庭を出でず。咎なし(水澤節)初九は陽剛居正。まだ時期が到来していない,通じるところ,塞がるところ(通塞)を弁え,慎重に構えているので咎はない。「節」の卦は,節制,節約の節度を教える卦。程よい加減を弁え,出処進退を見極めることの重要さを教えてくれる。

【毎日易経】中孚(ちゅうふ)は,豚魚にして吉なり(風澤中孚)「中孚」は第3,4爻が陰で周りが陽剛で包まれている。心中に誠がある卦象にとる。上卦は巽(風)で巽(したが)う,下卦は兌(澤)で説び。心に誠がある人には豚魚(ふぐ)でさえ従う。だから吉なのである。

【毎日易経】九二,鳴鶴陰に在り,その子これに和す(風澤中孚)親鶴が岩陰で鳴けば,子の鶴もこれに合わせて鳴く。この子鶴は初九。二陰の下に初九,九二の二陽が,孚誠の徳をもって心を通いあわせている様子。お互いの姿は見えずとも,誠の心で通じ合っているのである。中孚は誠を説く卦。

【毎日易経】君子もって行いは恭に過ぎ,喪は哀に過ぎ,用は倹に過ぐ(雷山小過)「小過」は少し「過ぎる」。気付かずに度を過ぎてしまうことを戒める。君子は行動は丁寧で慎み深すぎるくらいに,喪に服す時には悲しみの気持ちが強すぎるくらいに,贅沢せず倹約しすぎるくらいに,という。

【毎日易経】飛鳥もって凶なり(雷山小過)初六は正応の九四と繋がろうと一足飛びに向かおうとする。これは凶である。少し過ぎるのはいいが,行き過ぎは戒める。彖辞にも「飛鳥これが音を遺す」とあるが,小過の卦象は,胴体(三爻,四爻)が羽を広げている様子に取る。

【毎日易経】君子もって患を思いて予めこれを防ぐ(水火既済)「既済」は水が火の上にあって陰陽が相交わり,ことがすべて完成した,いわば完璧な卦。完成の後は崩壊への道となる。だからこそ君子は予め,ほころびに備えて様々な対策を施すのである。

【毎日易経】初九。その輪を曳き,その尾を濡らす。咎なし(水火既済)上六の「その首を濡らす。厲し」と対になる。既済は「完成」を表す卦だが,初九はまだその始めなので事を起こすのも慎重。それゆえ咎はない。ずぶ濡れになるような迂闊な行動を起こす(上六)のは厲しとなる。

【毎日易経】小狐汔(ほとん)ど済(わた)らんとして,その尾を濡らす(火水未済)「既済」と陰陽が逆になったのが「未済」。未完成を表す。小狐が,川を渡るに尾をすっかり濡らしてしまうのは技術が未熟だから。事を成し得るだけのものが身についているかどうか慎重に判断すべき。

【毎日易経】九二。その輪を曳く。正しくして吉なり(火水未済)自らの未熟な度合いをよく心得ていて,盲進せず,車の輪を曳き戻して自ら止まる象。貞正で吉であるという。水火既済の初九「その輪を曳き,その尾を濡らす」に対応。未完成な状態から進む際のあるべき態度を教えてくれている。

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