【本】『三国志』(吉川英治)
「無料」という名の誘惑
世の中に『三国志』ファンは多かろうと思いますが,その最初が「吉川三国志」だったという人もまた少なくないかと思います。
その「吉川三国志」が,著者没後50年を経たことで今は無料で楽しむことができます。
ここでは「序」だけを挙げましたが,全部で12巻あります。
ひとつひとつダウンロードすれば無料ですが,12巻まとめた合本を200円程度で販売しているのもあるので,面倒なのは嫌だという方はそちらを取るのもいいでしょう。
『三国志 全巻 第2版』などがそうです。
私は「吉川三国志」は読んでいなかったので,これはありがたいと,全巻ダウンロードしたのでした。
『三国志』との出会い
私が『三国志』に出会ったのは,小学生の頃,「少年少女名作集」か何かの「リライト本」でした。簡単に名場面だけをまとめた一冊で,それでも十分に壮大なロマンを味わうことができました。
ほどなくして始まったのが,NHKの『人形劇 三国志
』でした。
多少,曹操を悪者にしすぎている嫌いはあるにしても,本当に素晴らしい人形の演技で,いろんな名場面が今もなお脳裏に残っています。
そのときの原作扱いだったのは『三国志演義(立間祥介訳)』でした。
確か当時は8冊本で,表紙はテレビの人形劇の写真がそのまま使われていました。
小学生には難しかったはずですが,むさぼるように読んだ記憶があります。
面白くてたまらなかったんですね。『演義』なので,講談調になっています。
各回の終わりには「前門には虎,後門には龍,まさに絶体絶命の危機,劉備の運命やいかに!それは次回に」といった調子で結ばれているので,切りはいいものの,そこで止まれなかったのです。
『三国志演義』と「吉川三国志」
『三国志演義』は,さまざまな形で受け継がれていた「三国志」を,明の時代に羅漢中がまとめたものです。
時代がかなり隔たっていますから,相当の脚色もあちこちに入っています。
それでも,今となってはそれがまた「受け継がれたもの」と捉えていいだろうと思います。
それを踏まえてさらに吉川英治の脚色が加わったのが「吉川三国志」です。
端的には諸葛亮孔明が亡くなったところで物語を止めているところでわかるかと思います。
『三国志演義』では,その後を受け継いだ姜維伯約らの活躍も描きますが,吉川英治は「ここまで」と筆を止めています(その理由は,『篇外余禄』に著者自身が語っていますので,私は触れないでおきます)。
どちらがいい,悪いではなく,それぞれが「摂受」の形だと知って,読むと楽しいかと思います。
横山光輝の漫画で読むのも同じです。それもひとつの形なのです。
いろんな形で受け継がれている『三国志』。
それを無料で楽しめるのですから,これは見逃す手はないだろうと思います。
さて,長くなってしまったので,『三国志』の中身はまたあらためて書くことにします。
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