*

【本】『易経 ビギナーズ・クラシック 中国の古典』

「君子,占わず」は本当か?

高島嘉右衛門に関する本(『横浜をつくった男』『乾坤一代男』の2冊)を読んだ影響もあるのですが,やはり易は占ってこそのものだなと,最近,あらためて感じるようになりました。

荀子の言葉ですが「善く易を為(おさ)むる者は占わず」というのがあります。

『易経』を深く,深く学び身につけたら,もう占うことすら必要ない,ということです。

一見,占うことを否定しているように見えますが,ここに至るまでに占い尽くして,尽くし切った先の,達人の境地として捉える方が正しいでしょう。

そう考えると,『易経』を深く理解するのには,易者になるかどうかは別にして,占いの観点からの解釈もしっかり学ぶ必要があります。
そうすることで,『易経』の言葉が立体的に立ち上がってくる。そう思って,あらためて加藤大岳師の『易學大講座』を手に取りつつ,易占からの視点を踏まえた解説本を手に取るようになりました。

一年間の放置

角川文庫から『ビギナーズ・クラシック 中国の古典』というシリーズが出ています。

自分自身の『易経』へのアプローチの仕方の変化があって,そのシリーズ中の『易経(三浦國雄著)』があらためて気になるようになりました。

「占いの書としての解釈」が色濃く出ている・・・というレビューなどから,なんとなく敬遠してしまっていたのでした。
Amazonの記録では,ちょうど1年前に,同じ著者の『増訂 易経』とセット文庫本版を買っていながら,1年間全く手付かずのままでした。
おまけにその文庫本がどこかに紛れてしまって出てこないという恥ずかしい状態に・・・

ということで,1年遅れですが,あらためてKindle版で購入したのです。

なるほどと思わされる読み方

あらためて読み始めると,まず書き下し文の読み方が非常に斬新なのです。

『易経』には頻繁に「貞吉」という言い回しが出てきます。
多くの書では「貞なれば吉なり」「貞にして吉なり」と読ませます。
「貞淑・貞正であれば吉である」ということになりますが,この『易経(三浦國雄著)』では「貞」を「問う」の仮借と解釈し「貞うなれば吉なり」,つまり「占いたいと思ったことは吉である」というふうに解釈していきます。

これはこれで意味がすんなり通ってきます。なるほど・・・

ずいぶん意味の捉え方の印象が異なるところがありますが,どっちが「正しい」のか,それはまだ私ごときでは決めきれません。もっともっと自分で勉強を深めないといけません。

易占例が面白い

この本の特徴は,文庫本のわずかな紙幅に,各卦の占例を載せているところです。
まあ中には「エピソード」の紹介にとどまっているものもありますが,それはそれでさらに易の世界を広げて見せてくれるもので,非常にそそられました。

先般紹介した『春秋左氏伝』の例なども出てきます。

なるほど,易占いがそのように実生活と結びついていたのか・・・ということが伝わってきます。そう「活きた易経」を学ぼうと思ったら,やはり占例は大事なんです。

今頃になってようやくそのことを理解しました。

あらためてまた一から勉強し直します。そういうきっかけを深くあたえてくれたこの本は,大事にしたいと思います(文庫本探さなきゃ)

ビギナーズクラシックシリーズ

ということで,角川ソフィア文庫の『ビギナーズ・クラシック 中国の古典』はとてもとても「ただの初心者向け」というレベルを下げたものではなくて,深く広い世界をわかりやすく見せてくれる素晴らしいシリーズだとあらためて思ったので,昨夜,一気に4冊もまとめ買いしてしまいました。

これらの本も楽しみです。

関連記事

只管音読 國弘流英語の話し方

同時通訳の神様 國弘正雄氏の訃報に接して 同時通訳の神様と言われた國弘正雄氏がお亡くなりになりまし

記事を読む

【毎日易経】『繋辞伝』音読(2014.10.23〜11.26)

『易経』音読 Twitterまとめ 気がつけば毎日の『易経』音読も3周回ったのですが,昨年10月下

記事を読む

no image

【おススメ】LEDミニ・マグライト

夜の散歩に欠かせないお供が懐中電灯。 飼い犬の散歩などでお使いの方もいらっしゃるでしょう。

記事を読む

【中つ国】THE ART OF THE LORD OF THE RINGS

久々に「中つ国」ネタ 最近,このブログに書くことといったら『易経』か,それに関連して東洋思想だった

記事を読む

【本】『東京ラブストーリー After 25 years』

思いがけない単行本化 昨年1月下旬発売の『週刊ビッグコミックスピリッツ』に創刊35周年記念読切とし

記事を読む

no image

【本】『算数的思考法』

「算数」と「数学」の違い 小学生の間は「算数」と呼び,中学以降は「数学」と呼びます。 なぜなんで

記事を読む

【本】『壬生義士伝』(浅田次郎著)

浅田次郎との出会い 浅田次郎の本との最初の出会いは,20年近く前に『ビジネスジャンプ』に連載されて

記事を読む

【本】『人生と陽明学』

安岡正篤活学シリーズ PHP文庫の活学シリーズの第2弾に当たるのが,この『人生と陽明学 (PHP文

記事を読む

no image

【本】【雑感】芥川賞

芥川賞受賞作品『火花』の増刷 ラジオを聴いていると,芥川賞を受賞した『火花』(又吉直樹著)がさらに

記事を読む

【本】『春秋左氏伝 ビギナーズクラシック』

『易経』を学ぶなら外せない古典 『易経』が,本来は「占筮の書」であることは誰しもご存知でしょう。

記事を読む

no image
iMindMapアプリでセミナーメモ

マインドマップでセミナーメモ セミナー,講演会などに参加した時に,そ

【本】『東京ラブストーリー After 25 years』

思いがけない単行本化 昨年1月下旬発売の『週刊ビッグコミックスピリッ

no image
【本】『小暮写眞館』

ブログ再開 気がつけば半年近くもブログを更新していませんでした。

【本】『考える鉛筆』

やっぱり鉛筆が好き 文房具好きにも色々なタイプがあって,なんでも好き

【日常】あれこれお買い物

気楽なエントリー 久しぶりのブログです。 毎日メルマガで発信し

→もっと見る

PAGE TOP ↑