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【本】『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』

公開日: : 最終更新日:2014/09/10

村上春樹のファンという照れくささ

「今年こそノーベル文学賞を受賞するのでは?」…と毎年,日本中からの期待を背負うほどの作家になった村上春樹。

今でも嫌いじゃないのですが,どことなく「村上春樹,好きですねー」と言うのが照れくさい感じがしてしまうのはなぜでしょう。
ただ,「村上春樹のファン」と言っても,もうずいぶんと長い間,新刊本を買ってません。
それも「照れくささ」に繋がるのかもしれません。
いっそのこと,「ファンでした」という過去形の方がピッタリなのかもしれません。
(でも「嫌い」になったわけでもないので…)

最後に読んだ新刊本が『スプートニクの恋人』で,手元の本の奥付けを見たら,「1990年4月20日 第一刷発行」とあるので,15年以上前の話。
そりゃ,「ファンというのも照れくさくなるわ」とあらためて思いました。

『風の歌を聴け』との出会い

村上春樹を読むきっかけになったのは,高校2年生の時に読んだこの本から。

高校生のための文章読本

当時はまだ出版されたばかりの本でしたが,20数年経ってもまだ販売されているののが驚き。
実際,それだけの内容のある本だと思います。
70編の様々な文章を紹介しています。大人が読んでも十分楽しめるものばかりです。

この中に,『風の歌を聴け (講談社文庫)』が収録されていたのでした。
それとほぼ同時期に,当時受講していたZ会の通信添削でも『風の歌を聴け』が題材に選ばれていたことがありました。

今から思うと,勉強ばっかりしている高校2年生では『風の歌を聴け』はもちろん,羊三部作もちゃんと分かって読んでるとは思えませんが,それでも何か文章に引きつけられるものがあり,一気にファンになってしまいました。

『ノルウェイの森』が大ヒット

1987年9月に『ノルウェイの森』が出版されました。ファンになったばかりの頃に出た新刊本だったので,とにかくすぐに飛びついてみました。買って来たその日のうちに読み終わったはずです。

その後,ものすごい勢いで売れて,売れて,大ベストセラーに。
その時には,「なんでこの本がこんなに売れるんだろう?」と不思議に思っていましたが,村上春樹自身も戸惑いを感じているようですね。ある程度売れるのは嬉しいでしょうけど,あまりに売れすぎると「本当に分かってもらえてるんだろうか?」という不安が逆に押し寄せて来るかもしれません。

一番お気に入りの小説

『ノルウェイの森』以降では『ねじまき鳥クロニクル』がお気に入りでしたが,気軽に読み返せない分量なので多分2回ぐらい読んで終わりかもしれません。それ以前なら『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』も結構好きな小説でした。

長編では色々お気に入りはありますが,全部ひっくるめて,一番好きな小説が,今回のブログのタイトルで書いた『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』です。
これは短編で,私の手元にあるのは『カンガルー日和』という短編集の中に収められています。

4月のある晴れた日の朝,向こうから歩いて来る少女を見て,主人公は,「彼女こそ100%の彼女だ」と直感する。そういったシーンから始まるのですが,これ以上にない切ない物語です。
もうなんとも言えない切なさで,まだ女の子とろくにつき合ったこともない高校生の私は身悶えしながら読んだものです。

今から7年か8年ぐらい前のことですが,当時良く通っていた英会話カフェのスタッフにアメリカ人のスティービーという若者がいました。その彼の大親友が日本にやってくるというので一緒に飲みに行ったのですが,その彼も村上春樹好きだと。「どの小説が一番のお気に入り?」という話になって,まさにこの『4月のある晴れた朝に…』だと一致したとき,お互いのマニアックさと純真さ(おっと石を投げないで)ですっかり意気投合。
スティービーそっちのけで朝まで盛り上がってしまったのも懐かしい話です。

『海辺のカフカ』以降

『海辺のカフカ』以降,村上春樹から離れてしまっています。読んだとしても,それ以前の,すでに手元にある小説をふと手にして,ひとしきり読んで終わり…
そんな感じです。
何が理由か分かりません。読んでみたら分かるのかもしれませんが,今のところ,それもあえて「封印中」のような感じです。
ある意味,私にとっては,村上春樹の小説は私の青春時代と大きく重なるところがありました。
小説の世界の方が少し先なのですが,大学生になったらこうなるのかな,就職したてならこんな感じかな…という世界を見ていました。そういうのを過ぎたのと同時に離れてしまったのかなと自分では思っています。
ただ,村上春樹が今の小説で,どんな世界を描いているのか分かってないので,それが合っているのかどうかは分かりません。いつか何かの機会にふと手に取ることがあったら,ここ15年ほどの空白を埋めることがあるかもしれません。
それもまた小説,作品との出会いというものだろうと感じています。

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