【本】『壬生義士伝』(浅田次郎著)
浅田次郎との出会い
浅田次郎の本との最初の出会いは,20年近く前に『ビジネスジャンプ』に連載されていた『きんぴか』の原作者・・・というぐらいの認識しかありませんでした。
数年前,ちょっと競馬に凝っていた時期には『競馬どんぶり』というエッセーも読みました。(これは実に奥深い,面白いエッセーでした。これもオススメです。)
誰もが知っているような『鉄道員(ぽっぽや)』などなど,いくらでも人気のある本があるのにちゃんと読んだことがなかった作家でした。
それがKindle版でふとダウンロードしたのがこの『壬生義士伝 上 (文春文庫)』でした。
なにげなく読み始めて,「しまった,これは適当に読むような本じゃないぞ」ということに気づきました。
間違っても電車の中で「ふんふん〜」と気楽に読むような娯楽小説じゃない。
ぎりぎりと,生き方というものを,義というものを,どう捉えるか,どう考えるかを突きつけてくる,そういう物語でした。
義士ニ御座候
主人公は,新撰組で最も強かったと言われる吉村貫一郎。南部藩を脱藩してきた吉村と関わった人たちの昔語りを聞き取りながら,話が進みます。
一人の視点ではなく,多くの人の,それぞれの立場からの語りで,一人の人生を浮き上がらせていくという手法は実に見事です。
この吉村貫一郎の凄みのある人生が,重層的に,立体的にありありと迫ってくるのです。
それだけに気軽に読みにくく,なかなか読み通す時間が取れなかったのですが,なんとかようやく読破しました。
最後は涙,涙。本を読みながら,ここまで涙するのは,そうはなかったかと。
あまり書くと「ネタバレ」になるので控えますが,「誠之南部武士ニテ御座候 義士ニ御座候」と繰り返される最後のくだりは,胸をえぐられるような思いで読みました。
島原という街
新撰組の屯所は,京都の壬生あたりにあったとされています。
JRの丹波口駅近くには,島原と言われる花街の名残があります。
今も当時の面影を残す「角屋」さんなど趣のある街並みになっています。
そういえば,浅田次郎の本に『輪違屋糸里』という小説がありますが,その「輪違屋」さんも,今もこの島原の地に残るお茶屋です。
15年ほど前,仕事で関わりがあったのですが,またあらためてゆっくり訪れてみたいと思いました。
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