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【本】『横浜をつくった男』

公開日: : 易経, , ,

易聖・高島嘉右衛門

『易経』に興味を持って,少し勉強すれば,必ずこの名前を目にします。

易聖・高島嘉右衛門

とにかく抜群の的中率を誇った・・・ということは知ってはいましたが,それほど深く知ろうと思うこともないままでした。

それが,何のきっかけか,Amazonで「こんな本もどうですか?」と出されて出てきたのが,この『「横浜」をつくった男―易聖・高島嘉右衛門の生涯 (光文社文庫)』でした。

著者の高木彬光の本は,ずっと以前に『成吉思汗の秘密 新装版 (光文社文庫)』を読んだくらいですが,なんとなく惹かれました。

『成吉思汗の秘密』は,著者のミステリーに登場する名探偵に,歴史の謎を解き明かす役目を与えてみるという面白い試みの本ですが,なかなか面白く読めました。

それぐらいの軽い気持ちで手に取ったのが,今回の高島嘉右衛門の本でした。

超一流の起業家

読み始めてすぐに私の認識が甘かったことに気付きました。
高島嘉右衛門は易聖と呼ばれる以前に,

超一流の起業家としての側面を持っていた。

ということを知らなかったとは迂闊だったと思いました。

易に興味があってもなくても,起業家マインドを持っている人には,そっちの面でもきっとワクワクできます。
起業家としてのスケールの大きさで,まず,類を見ない人だといえます。
文明開化の世の中で,一気に横浜を近代文明の最先端を行く街に育てたのは,ひとえに高島嘉右衛門の活躍の賜物です。鉄道敷設,異人館建設など,さまざまな面での活躍があったればこそ,今の横浜があるんだと知ることができます。

神がかり的な易の的中

小説中には,そこかしこに易占の話が出てきます。
どのような卦が出て,何が変爻で,だから占断はこうで・・・というのが出てきます。
きっと掘り起こしていけば,他にいくらでも有名な占断は出てくるのでしょうが,有名なのは伊藤博文の暗殺を見抜いていたこと。

伊藤博文がハルビンに向かって出発する前に占ったところ「艮為山」の卦を得ます。

これは艮の卦が重なって出てきたものですが,一般に,「山」は大きな障害を示します。
行くてを阻む,大きな障害物です。

伊藤博文も,『易経』の中身はよくよく知っています。
当時,一級の知識人にとっては当たり前の教養でしたから。
今回の旅が,どれだけの困難を伴うか,そして結果が得られないかもしれない。
もっといえば,帰ってこられないかもしれない・・・

それでも,伊藤博文は行きます。自分の信念を貫くために。
高島嘉右衛門は言います「旅の間,『艮』や『山』という字が名前にある者は,けっして近づけてはなりません」と。

伊藤博文を暗殺した人物の名前との関連を,ただの偶然の一致だとみるかどうかは,人それぞれの感性としか言いようがないのですが,凶を示す卦も爻辞もいくらでもある中で,「艮」を重ねる「艮為山」が出たことを考えると,まさに神がかりな何かを感じます。

易占は易教のもつ二つの側面の一つです。あらためてそちらの面からの勉強もしたほうが,より易を深く理解できそうだと感じた一冊でした。

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