*

【本】『八つ墓村』(横溝正史)

公開日: :

たぁたりじゃー

『八つ墓村』は,私が小学校に入学した年,昭和52(1977)年に封切られました。

当時住んでいたところには小さな映画館が一つありました。
そこのポスター掲示場所が通学路にあって,この『八つ墓村』のポスターも貼られていました。

そりゃもう,小学校1年生には強烈に怖い印象を持たせる絵柄でした。
テレビのCMでも「やぁ〜つぅはぁか〜むぅらの たぁたぁりじゃ〜〜〜」とおばばらしきものが叫び,鉢巻に蝋燭立てた白装束の男が刀を持って走り回る姿が映り,それはもう,本当に怖い,怖い,怖い・・・という印象だけが強烈に残っているのが『八つ墓村』でした。

結局,映画は見ていません。他の『犬神家の一族』は何度も見直しているのに,なぜか『八つ墓村』は見る機会がないままです。

横溝正史の原作

原作は横溝正史。先に挙げた『犬神家の一族』は,なんと小学校の5年生か6年生の頃に,学校の先生に借りて読んだ記憶があります。

小学生が先生から『犬神家の一族』を借りて読んだ・・・というのは,今から思うとなかなかシュールです。先生が個人物を貸してくれたり,それも12歳前後の子供が読むような本でもないものを(苦笑)

ただ,それ以降は横溝正史の本は読んだことがないように思います。記憶にありません。

今回は,友達が「『八つ墓村』は,横溝正史の小説の中でも良いできなんだよ」と教えてくれたので,あらためて手に取ってみました。

『八つ墓村』

そもそもタイトルからしておどろおどろしい。古い言われを掘り起こしていくのが横溝正史のスタイルだと思いますが,今の目の前にあることだけでなく,世界観が重層的になっていく効果があります。
ただ,この『八つ墓村』に関しては,思ったほど,その古い話が生きてこない。
もっとおどろおどろしく因縁が巡ってくるのかと思うと,さほどでもなく,正直,若干拍子抜けの部分がないわけではありません。

今回あらためて横溝正史の本を読んで,なんと丁寧な文体だなあと感じました。
きちんと書いた,という印象が強い文章でした。
私が読んだのは「自選集」として出版されたものを読んだのですが,どうやら角川文庫版とは語句が違うところが多々あるようです。読んでいて,今なら差別用語として書けないような語がちらほら見られます。
でも,そういう言葉も,それを含んで,「時代」を理解しながら読むのが読者の使命。いたずらに他の言葉に置き換えてはいけないというのが私の気持ちなので,そういう意味ではラッキーでした。

現代のドキドキ,ハラハラのサスペンス,謎解きの楽しさに満ちたミステリーを読んでいる人には物足りないかもしれません。しかし,だからこそ,こういう小説をいまあらためて読むのもいいかもしれません。

関連記事

no image

【本・マインドマップ】ふだん使いのマインドマップ

実際,どうなの?マインドマップって? 「マインドマップ」という言葉は聞いたことはあるし,本を読んで

記事を読む

只管音読 國弘流英語の話し方

同時通訳の神様 國弘正雄氏の訃報に接して 同時通訳の神様と言われた國弘正雄氏がお亡くなりになりまし

記事を読む

no image

【本】『竜馬がゆく』

15歳の春に 司馬遼太郎の小説に初めて「はまった」のが,この『竜馬がゆく(文春文庫)』だったと記憶

記事を読む

【本】新体系・中学数学の教科書(上・下)

算数から数学へ 私は今,RAKUTOという学習塾で子供達を相手に授業をしています。 子供

記事を読む

【本】DIVE!!

おすすめの本とは? 先日,ラジオで「中高生向けおすすめの本」という話題で投稿募集があり,なんと1位

記事を読む

【本】『三国志』(吉川英治)

「無料」という名の誘惑 世の中に『三国志』ファンは多かろうと思いますが,その最初が「吉川三国志」だ

記事を読む

【本】『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』

『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』 先日,大阪梅田の紀伊國屋書店に立ち寄ったとき

記事を読む

【本】『あさきゆめみし』

期間限定無料のkindle版 「期間限定無料」というのにひかれてダウンロードしてみました。 高校

記事を読む

【電子書籍】Kindleニューモデル

新しいKindleが出る AmazonからKindleの新しいモデルが発表されています。 「

記事を読む

【本】『論語に学ぶ』

心の軸がぶれる感覚 人というのは弱いもの・・・だと私は思います。 楽したいという気持ち,遊ん

記事を読む

no image
iMindMapアプリでセミナーメモ

マインドマップでセミナーメモ セミナー,講演会などに参加した時に,そ

【本】『東京ラブストーリー After 25 years』

思いがけない単行本化 昨年1月下旬発売の『週刊ビッグコミックスピリッ

no image
【本】『小暮写眞館』

ブログ再開 気がつけば半年近くもブログを更新していませんでした。

【本】『考える鉛筆』

やっぱり鉛筆が好き 文房具好きにも色々なタイプがあって,なんでも好き

【日常】あれこれお買い物

気楽なエントリー 久しぶりのブログです。 毎日メルマガで発信し

→もっと見る

PAGE TOP ↑