【本】『とっぴんぱらりの風太郎』
公開日:
:
本
『とっぴんぱらりの風太郎』(万城目学著/文藝春秋)
「とっぴんぱらりのぷう」と言われても普通はピンと来ないかもしれません。
昔話の終わりに使われる決まり文句で,
はい,これでおしまい
めでたし,めでたし
という意味があります。あらためて調べると,秋田や山形方面の方言だそうです。
最初にこのタイトル『とっぴんぱらりの風太郎』を見た時に「とっぴんぱらりのふうたろう」と読んだのですが,これは「とっぴんぱらりのぷうたろう」と読むのが正しい。
主人公の名前は「風太郎(ぷうたろう)」だからで,しかも,「ただいま忍者失業中」のニート。つまり,「とっぴんぱらりのぷう」と「プー太郎」が掛詞になっている。
万城目学はタイトルでこんな仕掛けをしてきています。楽しい予感が広がります。
これまで『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』『あをによし鹿男』『プリンセス・トヨトミ』『偉大なるしゅららぼん』と読み続けてきていて,この本の出版に気づいていなかったのはうかつでした。
「新しく出てたのか!」と早速Kindle版で購入。
布団に潜り込んでから読み始めたのですが…
これまでの万城目ワールドの匂は十分にあります。
登場人物のちょっと抜けているキャラクターが醸し出すおかしみは,今回も変わりません。
あれよあれよと言う間に,本人の意思とは違う方向で大きな流れに飲み込まれ,やがてそれを糧に人間的にも成長するところがあり,大いに笑い,ちょっとホロっとするところがあり…
しかし,この小説はこれまでと一線を画すところがあります。
やはり江戸時代初期という舞台設定,忍者失格の烙印を押されているという主人公の設定,そういったものが,これまでの小説と違って,何ともいえない悲しみが胸をつきます。
後半は,「大いに笑い,すこしホロッと」という感じではなく,胸に迫るモノがあるなか,読むのを止めるのが惜しくなるぐらいの勢いで一気に最後まで走り抜けることになります。
これまで忍者小説は,池波正太郎,司馬遼太郎のものをずいぶんと読みましたが,そこで描かれてきた忍者という特殊集団の悲しみが,万城目ワールドで描かれているのに大いに驚きながら読みました。
気になる方は是非。
関連記事
-
-
【本】『三国志』(吉川英治)
「無料」という名の誘惑 世の中に『三国志』ファンは多かろうと思いますが,その最初が「吉川三国志」だ
-
-
【本】『ジャグリングで始める驚異の能力開発』
以前に,ジャグリングが脳の活性化,能力開発にとても有効だということをブログに書きました。
-
-
【本】新体系・中学数学の教科書(上・下)
算数から数学へ 私は今,RAKUTOという学習塾で子供達を相手に授業をしています。 子供
-
-
【本】『ビジネスパーソンのための易経入門』
占いでもなく哲学でもない 『易経』とはなんぞや?というと,常に問題になるのは「易の二面性」です。
-
-
【易経】『易経講話』
『易経講話』(公田連太郎・明徳出版社) 昨日紹介した『易を読むために』でも紹介されてい
-
-
【本】『竜馬がゆく』
15歳の春に 司馬遼太郎の小説に初めて「はまった」のが,この『竜馬がゆく(文春文庫)』だったと記憶
-
-
【易・本】『最高の人生教科書 易経』
縁尋機妙で導かれた易経との出会い 私が『易経』に興味を持つようになったきっかけは,小田全宏先生との
-
-
【電子書籍】Kindleニューモデル
新しいKindleが出る AmazonからKindleの新しいモデルが発表されています。 「
-
-
【雑誌】ラジオマニア2014
自己ルール 『趣味関連の雑誌について』 できるだけ趣味に絡む雑誌は買わないようにしよう・・・と思っ
-
-
【本】『男の風格をつくる論語』
やっぱり『論語』 6月末にふと「論語普及会」の本部を訪ねました。 安岡正篤先生の『易学のしお
- PREV
- キャリーバッグの修理
- NEXT
- 【映画】『四月物語』
