【天文】皆既月食を観測しよう
3年ぶりの皆既月食
明日,10月8日は,3年ぶりの皆既月食が全国で見られます。
石垣島より西では,月が欠けた状態で上ってきますが,それ以外の地域では,部分食からじっくり観測できます。
久しぶりの皆既月食で,しかもお天気もよさそう。私も楽しみです。
皆既月食ってどんなもの?
皆既月食は,地球の影に月が入り込むことによって起きる現象です。「地球の影」と聞いてもなかなかピンとこないかもしれませんが,太陽の光を地球が遮って,宇宙のスクリーンに影を落としている…その影の中を月が通る…と考えると,これはこれでなかなか壮大なロマンあふれる現象なのです。
さて,図付きでご説明したいのですが…なんと私の天体観測スケッチブックから,20年前に書いたサークルの同好会誌の手書きの原稿が出てきたので一部をご紹介。手書きの図がありました。
左の大きめの円が地球で,左側から太陽の光が来て,その影を月が通り過ぎる…という図です。
直接太陽の光が月に届かなくなりますが,皆既月食では月は赤く見えます(赤銅色とも言います)。これは大気を通過した光が回り込んで月の届くからです。
ダンジョンスケール
皆既月食はその時の大気の状態によって明るめに見えたり暗く見えたりします。
その「段階」をダンジョンスケールというスケールで示します。
0:極めて暗い。肉眼ではほとんど見えない。
1:暗い。灰色・褐色,表面模様の識別困難
2:暗赤色・錆色。本影付近かなり暗い
3:レンガ色。本影縁は明灰色・黄色
4:明るい。赤銅色・オレンジ色。本影,半影の境界域が青みがかる
過去の皆既月食では,1982年のはエルケチョン火山の噴火の影響で暗かったと言われています。1990年2月の皆既月食では3〜4の明るさがありました。
初めて皆既月食を見る方は,どのくらいの明るさなんだろ?と考えながらご覧になってみてはいかがでしょう?
皆既月食を観測しよう
さて,この皆既月食ですが,肉眼でも十分楽しめる天文現象ですが,もし双眼鏡や望遠鏡があればさらに楽しめます。
中でもスケッチは手軽に楽しめて,後から見返した時に情報量もたくさんあって実に優れた観測法です。
この記事の一番上のスケッチは2011年12月の皆既月食です。
この時は確か部分食の間は曇っていて半ば諦めていたところが何とか2枚程度スケッチができたものです。
すぐ上にあるたくさんカラースケッチをしているのは,1990年,大学1回生の時の観測記録です。
真冬の夜中,2時半頃から5時45分まで,3時間以上,15分おきに1枚のスケッチを完成させるという観測でしたが,今から思えば若いからできたなと(笑)終わった後,3時間椅子に座りっぱなしだったので,足が硬直して前にゆっっくり倒れこんだ記憶があります。
観測に必要な道具
肉眼でも見られますが,小さいのでも良いので双眼鏡があるとさらに良く観察できます。
一番上の月食スケッチは10×42(10倍42mm)の双眼鏡での観測です。
学生時代のは7×50の双眼鏡です。
そして色鉛筆。部分食から見るなら黄色と黒がメイン。皆既の間は赤銅色なので,赤・朱・橙・黄・茶などさまざまな色が必要です。その他,青・緑・紺・紫なども揃えたいところです。
というのも…紫っぽいところがあるのはもちろんですが,部分食の欠け際で,どうも緑っぽい色も見えるように思えます。目の錯覚によるものかもしれません(色の認識での錯覚)。そういうのも記録できるように用意します。基本的には12色の色鉛筆でも足りますが,24色あるとさらに良いでしょう。
明かりは普通の蛍光灯のようなものがベスト。LEDでもいいですね。まぶしければトレーシングペーパーなどで減光しておきましょう。
時計は正確なものを。記録として時間は必須です。
スケッチ用紙は,国立天文台の皆既月食のページにあります。
国立天文台
このページの「観察の仕方」の下の方にPDFデータが用意されています。
私は…1993年の観察用に,スケッチ用紙丸ごと1冊コピーして用意したのがあるので,それを使います(一番上の用紙)
でも,明日は皆既の間に家に帰れるかどうか…という感じですが。
意外な見所
さてここからは意外な見所としてかなりマニアックな話を。
1 皆既中,コペルニクス等の光条がどのように見えるかを食の始まる前と比べてみると面白いかもしれない
2 皆既中,明るく光る光点が数カ所見られます。それらがいつ,どこで見えたかを,後から月面図と照らし合わせてみても面白い。これは良く分かりません。なぜ光るのか,どこでも見えるのか。スケッチされる方は注意してみてください。
3 アリスタルコスの周辺も何か不思議な見え方しないかにも注目
これらは双眼鏡よりも望遠鏡向けの観測テーマですが,もし見られるチャンスがある方は是非気にしてみてください。
以上,今でも心は天文少年の須田からでした。
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