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【本】『活学としての東洋思想』

公開日: : 東洋思想

現代に生きる東洋思想

安岡正篤先生のPHP文庫活学シリーズの第1弾にあたるのが,この『活学としての東洋思想―人はいかに生きるべきか (PHP文庫)』です。

もとは昭和40年11月初版の『活学 -人になるために-』という安岡先生の講話集があり,そこから7編を収録した本です。

つまり,昭和40年以前の講話を集めた本からの抜粋ということで,昭和20年代後期から30年代にかけての講話の内容,ということは踏まえねばなりません。

それでもなお,現代に通じる話が語られているのに驚きます。

東洋思想というものが2000年の歴史を超えて受け継がれてきたものですから,たかだか数十年で当てはまらなくなるわけがない・・・とはわかっていても,現代にも驚くほど通じます。

『孫子呉起列伝』から

少し長くなりますが,一節を引用し,後は読まれた方の感想にお任せしたいと思うのですが,7編の講話の中で「『史記』の人物と思想」の中で『孫子呉起列伝』に触れたところです。
『孫子』の兵法というのが,現代の国際情勢においても,そのまま通用する,あるいは他国の意図を読み取るのに『孫子』を知らずにはいられないとまで感じる部分です。

(以下,文庫本p277-278から引用転載)

  上兵は謀を伐つ。其の次は交を伐つ。其の次は兵を伐つ。其の下は城を攻む。
城を攻む,軍事基地を攻撃するなどというのは,戦略戦術,兵法から言えば最下,最も下策である。地上兵力で闘う,敵の軍隊を伐つということも下策である。最上策は敵の謀を伐つ事である。敵の戦略戦術と外交内政,これをひっくり返すことである。
その次は敵を孤立に陥れることである。敵の友好国家を引き離すことである。今日これをそっくりやっているわけです。ソ連も中共も日本に向かって,現政権,日本の保守党というものを極力たたいて,その中に容共勢力をつくり上げて,日本の現実,支配政権を混乱崩壊に導く,つまりそのために出来るだけ日本を孤立に陥れる。この最も強力な妨害がアメリカ勢力であります。だから日本を如何にしてアメリカから引き離すか,アメリカを如何にして日本から撤退させるか,日米関係を如何にして離間するか,こういうことに中共やソ連は全力をあげているのであります。

(以上,引用転載終わり)

最初の一行は『孫子』の「謀攻篇」の一節です。
続く安岡先生の解説にもある通り,戦争,戦いにおいて直接攻撃は下の下。いかにして戦わずして勝つかというのが最上の策だというのが『孫子』です。
それを知らずして,敵の謀に乗ってはいけません,という諭しですが,さて,これは現代人の我々にとって全く過去の話でありましょうか?というのが読んでいての感想です。

中共もソ連も,今は指導者も変われば,ソ連に至ってはその当時の体制は完全に崩壊しております。
しかしながら,周辺の国々との存亡,駆け引きというのは,時代を超えても変わらないものがあるのです。

今の時代において,個別具体的にどれがどうと言わずともよいかと思います。
心ある人ならば,この本は今こそ読み直す価値があるということに気づかれることと感じます。

 

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