【本】『ビジネスパーソンのための易経入門』
占いでもなく哲学でもない
『易経』とはなんぞや?というと,常に問題になるのは「易の二面性」です。
本来は「占いの書」であり,そこから君子が学ぶべき「哲理の書」と受け継がれてきました。
どちらも同じくらいに大事なもので,両方の理解があってこそ,初めて「実践」できる・・・最近,ようやくそのことに気づきました。
では「実践」とは?
それはその『易経』に触れた人が,それぞれの人生の各場面で,易から学んだこと,知ったこと,感じたことを応用していく。まさに「生きていく」ことに他なりません。
ビジネスパーソンのために
さて,「人生の各場面」というときに,一つの絞り方として「働く場面ではどうか」というのが一番わかりやすいでしょう。日々,判断を求められるのがビジネスシーンです。昨日と今日と明日が何ごとも変わらない・・・そんなおだやかなビジネスシーンはそうあるものではありません。
そういう中で活かしていく『易経』の知識をお伝えしよう・・というのが,今回読んだ『ビジネスパーソンのための易経入門 (朝日新書)』です。
意欲的な挑戦
『易経』そのものが非常に大部で奥深いものなので,簡単に書こうとすると浅いものになり,詳しく書こうとすると膨大なものとなって,最後まで読み通すのが困難になる。
忙しいビジネスパーソンが手にとって,短時間で読み通せる分量として「新書1冊分」と考えたときに,どう切り込んで,何をどう選択して,どう見せるか。
そこに著者のセンスがみえてくるのですが,基本的なこと(そして多くの人には退屈になりかねないところ)はきちんと説明しつつ,易のダイナミックさ(変化の面白さ)を見せ,また大事なところはちゃんと示している・・・
というかなり「意欲的な挑戦」をされた本だなと感じました。
かなり苦心して書かれたのはわかるのですが,1冊目でこれだとどうなるんだろ?というのは疑問として残ります。最後までどれくらい食いついて読み通す人がいるだろう・・・という点で。
これは易のもつそもそもの性格もあるので,著者一人の責任ではないのですが,易に関する本の難しさをあらためて感じたところでもあります。
ただ,それなりに易に関心がある人で,しっかり読んでみたいと思う人なら最後まで読み通して次に進むのもいいのではないかと感じます。
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